2023年に改正される労働安全衛生法。そのポイントや運用管理に役立つOSHMSまで網羅的に解説

労働者の安全衛生を守る法律として制定された労働安全衛生法は、世情に合わせてたびたび改正されています。本記事では、労働安全衛生法の基本的な内容から2023年の改正ポイントまで網羅的に解説します。

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労働安全衛生法の概要

「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する」ことを目的に、1972年に制定された法律です。ではどういった背景で制定されたのかをはじめとした概要を紹介します。

労働安全衛生法が制定された背景

同法が制定された1972年は日本の高度成長期にあたります。当時、企業は生産性を高めるために設備投資に注力して大規模工事を推進していました。生産技術の革新で労働環境の急激な変化が進んだことにより、現場に不慣れな従業員が増加して毎年6000人超の労働災害死亡者が発生する事態となっていました。

こうした事態を打開するため、当時の労働省が専門家を交えて法整備に取り組んだ結果が労働安全衛生法の制定というわけです。

対象となる事業所と労働者の定義

労働者を雇う事業者は基本的に全て対象となります。労働者とは事業者から労働の対価を賃金として支払われている人が該当します。ただ、同居親族のみを雇用する事業者の元で働く労働者や家政婦などの家事使用人は同法の定義には当てはまりません。

労働基準法と労働安全衛生法との違い

労働基準法でも労働時間管理を行うように定められていますが、これは法定労働時間や時間外労働など、あくまでも労働時間の管理という観点で客観的に行うものです。労働安全衛生法では、健康管理の面から見た時間管理を行うことが求められおり、労基法では時間管理が不要とされている管理的な立場にある人や業務裁量型の働き方の人も労働安全衛生法では時間管理が必要です。

労働安全衛生法に基づき事業者が実施すべき事項

では、具体的にどういった施策を講じればいいのか、詳しく見ていきましょう。

安全衛生管理体制の確立

まずは安全衛生を管理するための体制の確立が必要です。一定の従業員数や業種に該当する企業は以下のような管理者を置くことが定められています。

管理者名

主な役割

選任要件

総括安全衛生管理者

事業場の安全・衛生業務の統括管理

一定以上の規模を持つ特定業種の事業場

安全管理者

安全衛生業務のうち、安全に関する管理

常時50人以上の労働者を使用する一定業種の事業場

衛生管理者

安全衛生業務のうち、衛生に関する管理

常時50人以上の労働者を使用する事業場

産業医

労働者の健康管理を専門的な立場から指導・助言をする

常時50人以上の労働者を使用する事業場

作業主任者

作業の指揮や機械の点検、安全装置の使用状況の監視など

政令で定められた特定作業を行う際、免許取得者などから選任

統括安全衛生責任者

複数の関係請負人が混在する場所での労災防止の指揮管理を行う

特定の業種・事業場による

安全衛生推進者(衛生推進者)

小規模事業場における安全・衛生の統括管理をする

常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場

また、常時使用する労働者が50人以上いる事業場では衛生委員会の設置が、加えて特定業種の場合は安全委員会の設置が義務付けられています。安全委員会は事業場の安全確保、労働災害の防止が目的で、衛生委員会は健康被害防止のために設置します。2つの組織の設置を義務付けられた場合、2つを組み合わせた安全衛生委員会の設置でも代替できます。

安全衛生教育の推進

労働者が安全かつ健康に職務を行えるよう教育することも事業者の義務です。新たな労働者を雇用した際の安全衛生教育の実施はもちろんのこと、作業内容の変更時や危険有害業務に当たる従業員への教育などを行い、個々の労働者に安全衛生への意識を高めてもらうための教育も行いましょう。

労働災害防止に向けた具体的な措置

労災防止に向けた措置も欠かせません。同法が定める労働者の危険や健康障害を起こす危険な事項は多く、

・機械類、発火性、引火性の物等、各種エネルギーによる危険

・掘削、採石、荷役、伐木等の業務における危険

・土砂崩壊の恐れがある場所、労働者が墜落する恐れがある場所の危険

などが該当し、これらの危険に対して事故等が起きないよう防止措置を取る必要があります。また、危険への備えだけでなく健康障害を防止するための措置を講じることも忘れないようにしてください。

職場環境の整備

労働者が快適な職場環境を整備することも大切です。主に以下の観点で整備していきましょう。

作業環境・・・照明の明るさや騒音、振動の防止、室温、臭いなどへの対応

作業方法・・・業務の効率化を推進して、業務負担を軽減する

疲労回復支援施設・・・仮眠施設や休養室などの設置

職場生活支援施設・・・男女別のトイレを設置し、労働者数に応じたトイレ便器の数を備える

これらの環境整備以外にも、6カ月に1回の大掃除なども環境整備に含まれます。

健康管理業務

健康管理業務は主に2つです。1つ目は健康診断の実施。50人以上の労働者を抱える事業所では、健康診断の実施、結果の通知と保存、健診結果の労働基準監督署への報告が義務付けられています。2つ目はストレスチェックの実施です。医師や保健師などに心理的負担の程度を把握するためのストレスチェックを年に一回の頻度で全労働者に対して実施する義務があります。

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2023年の法改正のポイント

労働者の働き方の実態に合わせて少しずつ法改正が進んでいる労働安全衛生法ですが、2023年にも法改正が実施されます。今回の改正の対象となるのは、危険有害な作業を行う事業者の元で作業する一人親方等や労働者以外の人。その内容について確認しましょう。

対象となるのは危険有害な作業を行う事業者

危険有害な作業とは、化学物質にばく露する可能性がある作業を指します。事業者は労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を最小限にとどめるよう今回の改正で義務付けられます。項目ごとに2023年4月、2024年4月と施行開始日が異なり、2023年4月から施行開始となるのは化学物質へのばく露濃度の低減措置です。

一人親方等に対する措置の実施が義務化

危険有害な作業現場での業務を請け負わせる一人親方等に対して、化学物質へのばく露濃度の低減措置の実施が義務付けられます。具体的には以下のような措置を実施します。

・換気装置等の稼働

・特定の作業方法が義務付けられている作業に関して周知する

・保護具の使用義務がある作業に対して、一人親方等にも必要性を周知する

つまり、今までは自社労働者だけに義務付けられていた安全衛生管理を、請負先である外部の人にも適用させるということです。

同じ作業所にいる下請けの人たちに対する措置の実施の義務化

同じ作業場にいるけれど、労働者ではない人に対しても安全衛生に関する措置が求められます。該当するのが、他社の労働者や資材搬入業者、警備員などです。同じ業務はしていないけれど同作業場にいる一人親方も対象です。具体的な措置は以下のような内容です。

・保護具の使用義務がある場所では、労働者以外にも使用する必要がある旨を周知する

・立ち入り禁止や喫煙・飲食禁止の場所について労働者以外も同様にする

・事故等で労働者を退避させる場合、労働者以外も退避させる

・化学物質の有害性等を掲示する義務がある作業場所では、労働者以外の人も見やすい場所に掲示する

法律違反をした場合の罰則

労働安全衛生法に準じた適切な措置を怠った場合、罰則が課せられます。特に罰則となりやすい違反を紹介します。

作業主任者の選任義務違反

作業主任者を設置していない、または設置していたものの監視を怠っていた場合は、6カ月以上の懲役、または50万円以下の罰金が課せられます。

安全衛生教育の実施違反

労働者を新規雇用する際に安全衛生教育を実施しなかった場合、50万円以下の罰金となります。

資格が必要な機械の使用による無資格運転

資格が必要な機械類を無資格運転させた場合、6カ月以上の懲役、または50万円以下の罰金が課せられます。

労災発生時の報告書未提出や虚偽報告による労災報告義務違反

労災発生時に報告を怠ったり虚偽報告を行ったりした場合、50万円以下の罰金となります。

まとめ

事業者による労働安全衛生法の遵守は、労働者が安心して業務にあたるために必要な義務です。たびたび法改正が行われているため、迅速に対応して安全な職場環境を確保できるようにしましょう。また、専門人材への依頼もこの機会に検討ください。